2003年の秋くらいだったろうか。
私は深澤直人氏をトラッキングしていた。
彼のデザインするもの以上に、彼の文法が好きだった。
建築会館で行われたセミナーでこんなことを話した。
「傘立てをデザインするときに、無理に傘立てをデザインしてはいけません。玄関のタイルの溝に傘を立て掛ける無意識の習慣があったなら、そのタイルの溝が傘立てなのです。」
私は「うまいこと言うな」と思った。
そしてその場で考えた。自分の中に深澤直人氏を憑依させて
カメラのデザインを根本から考えなおしてみようと!

「写真とはその人の目の前の風景から一部を選択し、切り取り、画像に定着させることだな・・・。」
子供のころ、写生大会などに行くとこんなポーズをしたのを思い出した。
風景からなにかを切り取るときの自然な動作だ。
映画監督もよくこんなポーズをしている。
この監督のフレームの作り方は独特でおもしろい。
自分の中でカメラからレンズやボディが消え始めると
目に留まるものも変わってきた。
その頃発売されたソニーのサイバーショットの新聞広告も目にとまった。
それはカメラで撮る人の顔が隠れているものだった。
そうだよな・・撮られる人にはこう見えるものだよな・・・。
「でも指のフレームがカメラだったらどんなだろう?」
そう思って東急ハンズからスポンジを買ってきて作ってみた。
レンズ部分はサイバーショットのカタログから拝借した。
裏側にもレンズをつけ、撮影されたかどうかを確認するためだけの
テトリスのような横長の液晶をつけた。
このスポンジのプロトタイプでカメラごっこをしていると
最初は自分側にあるレンズを意識してしまっていたが、
それよりフレームの先にある相手に気を取られるので
意外にも自分の表情はリラックスすることが分かった。
その頃、ソニーのバイオUの広告が指のフレームを使っていた。
写真には残っていないがハンディカムの中吊り広告でも
ファインダーを手書きの額縁にしたものを使っていた。

このスポンジプロトタイプを友人に見せ始めるとそのうちの一人が
「おもしろいから作ってみたら? やってくれそうな人あたしの友人にいるよ!」
と東大の大学院にいるエンジニアを紹介してくれた。
彼は早速渡したピコショットの回路を改造してくれた。

サイズはなじみのある2L版に収めたかった。
こちらから素材の指定はしていなかったが、
彼は回路をバイパスしながらアルミのフレームに収めようとした。

こうして完成したのが「ハウディ?」の第一号プロトタイプだった。
最初に手にしたとき予想以上に美しいフォルムに
「これはすごい!写真の歴史を変えるというのに、このシンプルさはどうだ!」
と興奮し、その夜はMOMAのパーマネントコレクションに選ばれた夢を見た。

そして、私はこの「ハウディ?」で写真を撮りまくった。
近くにいた犬に「やあ!(howdy?)」と声をかけると
彼はフレームごしに僕の目をみつめた。
私は、どんな写真になっているかワクワクして家に帰り
その画像をPCで吸い出した。この写真を見て思った。
「これは、みんなに愛されるカメラになるかもしれないぞ・・」
(続く)
ハウディ?についてのプレゼンテーションはこちら。














